東京高等裁判所 昭和55年(行コ)93号 判決 1981年3月30日
新潟市医学町通一番町六五番地
控訴人
後藤作治
右訴訟代理人弁護士
坂上富男
同
坂上勝男
同市営所通二番町六九二番地五
被控訴人
新潟税務署長
高畑甲子雄
右指定代理人人
布村重成
同
新村雄治
同
塩井幸雄
同
堀野冨士夫
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「原判決中控訴人に関する部分を取り消す。被控訴人が控訴人に対し昭和四七年五月一日付をもってした原判決添付別紙一の5欄(二)記載のとおりの相続税の更正及び過少申告加算税賦課決定処分(同欄(三)記載のとおりの昭和四八年五月一五日付の審査裁決により取り消された部分を除く。)のうち同欄(一)記載の申告課税価格を超える部分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の主張及び証拠の関係は、控訴代理人において、「仮に、本件証券が亡トメの相続財産に属するものであり、亡トメの相続人の誰れかが勝手にその解約・払戻をしたものであるとしても、その者を特定することは現実の問題として困難であり、遺産分割の際右払戻の事実を計算に入れて分割を行うことは不可能であるから、相続人らとしては、相続税法五五条但書の措置をとることができず、結局、右払戻を受けた者以外の相続人は本件証券を取得しないにもかかわらず相続税を負担させられることとなるのであり、かかる不合理な結果をもたらす本件処分は、同条の趣旨に反し違法である。」と述べ、被控訴代理人において、右主張に対し、「本件証券の解約・払戻をして元本を着服した者が口をつぐむ限り、その者が相続人中の何人であるのかを特定することはできないこととなるかもしれないが、このことは、他の相続人において有する遺産分割請求権の行使が事実上困難であるというにとどまり、相続税の課税において考慮すべきことがらではなく、そのために本件処分が違法となる理由はない。」と述べたほかは、原判決事実摘示中控訴人に関する部分と同一であるから、これをここに引用する(ただし、原判決四枚目裏一一行目に「七二三の証券」とあるのを「七二三の証券は」と、同五枚目裏末行から同六枚目表一行目にかけて「何人かに」とあるのを「何人かによって」と、同六枚目裏一行目に「死亡において、」とあるのを「死亡時において、」とそれぞれ訂正する。)。
理由
当裁判所も、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと判断するものであって、その理由は、控訴人の当審における主張について、「仮に、控訴人主張の事情から亡トメの相続人において後日相続税法五五条但書の措置をとりえない事態が事実上生ずるとしても、そのことのゆえに本件処分を違法とすべきいわれはないから、右主張は失当というほかない。」と附加するほかは、原判決の理由説示中控訴人に関する部分と同一であるから、これをここに引用する(ただし、原判決九枚目表一二行目に「二〇日」とあるのを「三〇日」と、同枚目裏四行目に「(乙第二四号証)」とあるのを「(乙第一四号証)」と、同一二枚目表五行目に「吉田あき」とあるのを「山田あき」とそれぞれ訂正する。)。
そうすると、原判決中控訴人に関する部分は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小林信次 裁判官 浦野雄幸 裁判官 河本誠之)